原発輸出の問題点

世界史に残る地球規模で最悪の福島原発事故の収束がいまだに見えず、多くの人々 が被ばくの不安と恐怖に苦しめられているというのに、原発輸出の是非に関する議論もほとんどされないまま原発輸出が遂行されていくのは許せません。原発輸 出を推進するために、私たちの税金である公的資金も投入されています。(公的資金と原発輸出11.11月緊急院内セミナー 国際環境NGO FoE Japan 渡辺瑛莉氏 / PDF書類)

 

日本政府の原発輸出に関する基本姿勢

民 主党政権は2010年6月にまとめた新成長戦略で、原発輸出を積極的に進める姿勢を示し、戦後初めて、官民一体のフルパッケージ型原発輸出の方針を打ち出 した。電力会社や原子炉メーカーなどが参加する原発輸出専門の新会社「国際原子力開発」を設立し、オールジャパンの枠組みを整えた。ベトナムをはじめアジ アの新興国は経済が発展し、電力不足が深刻化している。経済の発展には電力の安定供給が欠かせない。地球温暖化対策の面でも、長期的には新興国にも温室効 果ガス削減の義務が課せられる可能性が高く、これらの国での原子力発電の必要性は高まっている。

日本は60年代から原子力の平和利用という名目で取り組んでおり、多くの技術の蓄積を持つ。こうした蓄積を世界のために生かすことは、アジアの経済発展を 取り込んで生きていくという、日本自身の国策にも合致するとしている。11年12月9日、第179回国会で、ベトナム、ヨルダン、ロシア、韓国との原子力 協定を承認し、原発輸出に向けた重要な一歩を踏み出した。自国で危険だと分かったのに、他の国に輸出し、原発をつくるのは構わないという政府の論理には驚 くのみ。自民党政権に変わっても、この方針に変更はないようだ。

原発輸出の問題点を箇条書きにしてみました。

1. 倫理性

先ず第1に挙げられるのは倫理的な問題である。甚大な被害をもたらした福島原発事故の全容も明らかにならず、その問題解決が今後も長期に及ぶというのに、 原発の他国への輸出など倫理的にも許されることではない。 三菱重工の佃会長も「自国で危ないと判断したものを海外に販売はできない」と発言している。企業の倫理からいっても、自国で受け入れられないものを、他国 に輸出するは許されない。

2.安全性

事故リスク、立地条件(冷却水確保や周辺人口)、施工・運転リスク、監視体制など 安全性の問題が発生する。さらに福島第1原発原発事故によって、被曝労働の実態や低線量被曝、内部被曝などのリスクも徐々に明らかになってきている。

3. 経済性

世界で建設されつつある原発は、コストの急騰と建設期間の遅延で、非常に大きな投資リスクとなっているのが実態である。また、放射性廃棄物の処理費用および巨額な事故処理費用の負担を考慮するとコストは非常に高くなる。

4. 放射性廃棄物管理

半永久的な管理が必要な使用済み燃料処分は日本でも未解決の大きな課題である。モンゴルを最終処分場にする計画など問題外。

5. 核拡散・テロのリスク

軍事転用・テロのリスクが大きい。 近年、ロケット弾や爆弾を使用したテロが頻発しており、原発はテロの格好の標的となる危険性がある。

6. 環境・社会影響

原発は温室効果ガス排出削減に寄与するなどと言われるが、ウラン採掘から原発の燃料とするまでの行程や原発が出す温排水問題など考慮すると削減効果は全くない。また原発建設予定の各地では住民移転などの問題も起こっている。

7.情報公開・市民参加

原発が輸入・建設されていく過程で原発に関する十分な情報開示がされているか、住民説明会や公聴会が公平性をもって開催されているか。各地で原発建設中止を求めて、抗議行動や署名活動が繰り返し行われている。

8.日本の公的資金投入

原発輸出には日本の税金もつぎ込まれ、得するのは、原子力ムラの人々と一部の企業だけでというのが実態である。また福島原発事故により、事故リスクの甚大 さが明らかになった。事故が起これば国すなわち国民が賠償責任を負うことになり、国民負担に結びつく可能性が高い(日本国民が連帯保証人の立場)。十分な 国民的議論もなく、公的資金を投入し、原発輸出を推進し続けることは大きな問題といえる。